雨の街、ベルゲン

 今年も梅雨の時期がはじまった。例年に比べてみてもかなり早い梅雨入りのようで、空を眺めてみると何がそんなに不安なのかと思ってしまうような鼠色の雲が空全体に広がっている。例年と違うのは、今年は東京よりも高地でこの梅雨のシーズンを過ごすと言うことだろう。

 5月半ばまでは、盆地特有のスカッとした青空で、週間天気予報で雨マークがついていたとしても、その雨の予報の日の前日になると、突然晴れ予報に変わってしまうくらい晴天に恵まれていた。そんな場所も流石に梅雨の季節には逆らえないようで毎日鼠色の空を仕事部屋の窓から眺めている。こんな雨降りの毎日でも高地であるが故、雲が山の稜線の低いところを流れていて、時折日本画のような景色を拝むことができることがこの時期の唯一の楽しみなのだろうか。そして同時にこの山の裾野に垂れ込めている雲や霧や雨空や流れの早い雲を眺めていると、ノルウェーの街、ベルゲンを思い出す。

 

 

 ノルウェーの西側の海岸に位置するベルゲンという街は、首都のオスロに次ぐ第二の都市。西側に流れるメキシコ湾から流れる暖流の恩恵も得て、北欧の都市の中にしては割と暖かな気候なのだ。しかしその暖流や周辺が山に囲まれた地形であることが原因で、雨の降る日がとても多い。どのくらい多いのかというと年の3分の2が雨というほど雨の街としてもよく知られている。自分がベルゲンの街に到着した時は幸運なことにそんな雨の止み間だった。

 今回の旅の目的としては、このベルゲンの街から生まれたレインウェアブランドNorwegian Rain(ノルウェイジャンレイン)の創業者の一人でもあるT-Michael(ティー・マイケル)に日本の骨董品を届けるためだった。

 

前年にもう一人の創業者でもあり、Norwegian Rainのクリエイティブディレクターを務めるAlexander Helle(アレクサンダー・ヘレ)にインタビューし、彼らが日本に来日した際にワークショップを企画したり、一緒に朝食を食べたりしている時に、彼らが日本の古い骨董品なんかを彼らのお店にディスプレイ販売できたらいいよね、といった話になり、自分が色々と見繕い日本の骨董品を手に海を渡ったという訳なのだ。

 

 

 夏至へと段々と近づいて来ている北欧エリアでは、23時ごろにならないと陽が落ちない所謂白夜になっており、オスロからベルゲンに飛行機で到着した時も19時を過ぎていたけれど、周辺はまだ午後のような陽射しで明るかった。しかし、空港から市内までのバスでの移動の間に天気は崩れていきすぐに霧雨が降っていたが、中心部に到着する頃には霧雨は上がり、また陽射しが出てくるといったように1時間単位で天気がコロコロと変わっていったのが、この街の第一印象だった。Airbnbで取った共同宿泊アパートに荷物を置くとすぐに街に繰り出してみたのだが、ノルウェー第二の都市とはいえ人口は東京などと比べるとはるかに少なく、人もまばらでどんよりとした流れる雲の合間から射す強烈な陽射しが誰もいない街の広場を照らしており、シュルレアリスムの絵画の中に迷い込んでしまったような摩訶不思議な気分にさせられたのだった。つづく。

 

こちらのコラムは2021年5月22日に配信されたニュースレターの内容の再編集版です。https://mailchi.mp/df00a31c5cf5/20210522


投稿順 新着順