マガジンa quiet dayのこれから – コンテクストと関係性 –

いよいよシリーズ12作目となるマガジンa quiet day20201020日に販売開始します。振り返ってみると、原稿データを印刷会社に入稿した日と最新号を販売開始する日が昨年と全く同日という偶然のスケジュールの一致に少し運命めいたものを感じています。

そして、年初からの未知のウイルス(COVID19)の蔓延の禍中での取材や制作などは進行がなかなか大変でしたが、軌道修正を掛けつつ完成まで走り切れたことは、とても大きな経験になったと思います。最新号のコンテンツを眺めていても、昨年末に想定していた形とは“良い意味”で全く異なる想像を越えたアウトプットになったこと、そしてマガジン自体の意味性も変化していく予感を実感しています。

 

コンテクストを考える



普段マガジンを作る時に意識しているのが「文脈」をどう作っていくかということです。

マガジンa quiet dayはインタビューを中心に編集・デザインしているのですが、一見するとインタビュー順にでも並べられているのかなと思われるかもしれません。けれど毎号設定しているテーマが、とても抽象的なものだったり、色々な解釈が出来そうな事柄なため、そのテーマが伝わるようなコンテンツの並び順というのを意識しています。もちろん一つ一つのインタビュー記事自体に価値もあるのですが、それがマガジンという身体的なメディアの中に順番に並べられることで、お互いの記事がお互いの記事を支え合うような関係性が生まれてきたりします。その関係性は明確に見えて分かるものではなく、写真に写る空間のトーンだったり、インタビューの言葉そのものや言葉の端々から伝わってくる感情の余韻のようなものから関係性を汲み取り、構造化しながら編集していきます。自分たちがこのマガジンを12作も紙媒体で作っているのも、この「文脈」による関係性の効果が一番読み手として実感出来るものが紙媒体だからなのです。

年初の計画では、ある程度既にストックのあったインタビューを配置し、文脈として少し厚みを持たせたい部分は5月ごろに追加で北欧に取材をする、なんてことを頭にイメージしながら過ごしていたら、COVID19の蔓延の影響で海外は愚か、一時は世界的に外出も控えざるを得ない状況になってしまいました。そういった状況の中で編集チームの協力もあり、ZOOMなどを駆使しながらインタビューが出来たことで今まで見えていなかった可能性も可視化されました。

 

共に編む・織る



最新号のマガジンの中の「THE COMPASS」の中でも触れましたが、「コンテクスト」の語源は「共に」と「編む・織る」というところから生まれており、普段からよく使われ、先ほども出した「文脈」という名詞的な意味よりも身体性の帯びたニュアンスが言葉の中に意味づけされています。

マガジンを創刊した2015年当初は取材先にアポイントを取ってインタビューしていました。けれどそれもシリーズが進んでいくにつれ、以前にインタビューをさせてもらったクリエイターたちから、「こういう面白い人がいるよ!」だったり、「あなたのマガジンに合いそうな人がいるから紹介していい?」といったような紹介をベースにした関係性が出来上がり現地での取材は進んでいきます。
この関係性を作る部分がとても難しいところでもあるのですが、自分たちのマガジンでインタビューをする時は、そのクリエイターから何かを教えて欲しいというスタンスではなく、こういったテーマについて一緒に考えていきたいということを伝えて対話をしていくところからスタートするのです。インタビューの中では、クリエイターの言葉を聞くだけでなく、自分たちの意見なども相手に聞いてもらうので、自然とお互いを知り合うことができるのです。こういうインタビューのプロセスを経ると、「インタビューをする、される」という無機質な関係から、一緒に良いものを作っていくという有機的な関係に変化していくことが如実に感じます。まさに、「コンテクスト」の語源である「共に」「編む・織る」という関係性なのです。

そして、このマガジンa quiet dayの取材の積み重ねによって育んだ有機的で「コンテクスト」に富むクリエイターたちとの関係性を、編集チームに対しても応用していけるのではないかと考え始めていったのです。

 

「共に」「編む・織る」ものとしての価値

元より、マガジンa quiet dayの編集チームは「雇う、雇われる」という関係性ではなく、より自立した「個」がフラットに関わり合うチームなのですが、コンテンツ内容や文脈の部分のイニシアチブはどうしても編集長である自分が決めざるを得ない状態でした。けれど、今回のCOVID19により、一度自分たちの状況やマガジンa quiet dayの状況を俯瞰して考え、新たなチャレンジへと舵を切ったのでした。

具体的に何をやったのかというと、一部の編集メンバーがより主体的取り組めるようなコンテンツの枠として、マガジンa quiet dayのページを丸々明け渡したのです。そこでは無責任に丸投げというわけではなく、どんなコンテンツにしていくかということを互いに対話しながら、メンバーが得意なこと(今回では写真とレザークラフト)とマガジンa quiet dayの世界観を組み合わせることで、彼ら自身の自己実現、もしくは特技を仕事や私事に昇華していくことをマガジンa quiet dayという媒体を通して応援し後押ししていきました。お互いの強みを活かしながら一つのものを作り上げていくことは、それを口にする以上に難しいことです。

編集メンバーでフォトグラファーJun Isakaが、誰しもが人生のどこかで見たような、そんな日常の中の断片を切り取った写真集「a day in the life」は、最新号のテーマである「dialogue(対話)」の中でも一番表現方法が難しいであろう「自己との対話」をヴィジュアル表現として形にしてくれて、もう一人のメンバーのShuntarou Sakagamiによるレザークラフトの制作と「間」についての問いかけは、手触り感のあるレザーとその真逆の実体のない「間」とのコントラストが、世の中の不確かな自然の摂理を提示し、その余韻を残しておりエピローグとして相応しいコンテンツになったと思います。彼らと一緒に形にしたコンテンツは全体のページ数からしたら僅かなのかもしれませんが、マガジンa quiet dayというメディアとしての解釈や価値が広がった、とても大切なページなのです。

 

マガジンa quiet dayは、いつまでも変わらないために変わり続けていこうと思います。

 a quiet day 編集長 岩井 謙介


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