モノ、ゴトとの接し方

普段生活をしていて身の回りを見渡してみると、いかに多くのモノに囲まれているのかということが分かります。さらに都心部にいれば自分が求める、求めないに関わらず、否応になしに、街中でも宣伝や広告などの情報が目に飛び込んできて、スマートフォンでインターネットやSNSなどを開いてしまった時には、あたかも全ての情報を手にしたように、知った気になれてしまうものだからとても不思議です。もしかすると、本来消化できる情報の量をはるかに超えてしまっているのではないのでしょうか。

よく、モノづくりをしているクリエイターたちに話を聞くと、「ここは都市と違って情報のノイズが少なくて自分自身に向き合う時間が持てるからモノづくりには最適な環境なのではないか」という話をよく耳にします。
もちろん雑多な都市で集中するのは時に困難なので、そこには疑う余地はないのですが、果たして良いモノづくりやそれらが生まれる背景には、こういった外部の環境要因だけが必要なのでしょうか。

先日20191020日に東京のアクタス青山店が主催で開催されたデンマークのクラフトギャラリー「A. Petersen Collection & Craft」の家具を囲んだトークイベントに、数々のご縁が重なりイベントのファシリテーターという形で関わらせて頂いたのですが、まさしくその要素の断片を彼らとの会話の中から感じる取ることが出来たように思います。

デンマークの首都コペンハーゲンのアマ島と言われるエリアの少し外れに、今回トークイベントで来日したオーナーのAndersKariが営むA. Petersen Collection & Craftという場所があります。
Design House」と彼らが言うように、古い倉庫の建物をリノベーションして作ったその場所には、「作る」「伝える」「売る」と3つの要素が網羅された工房併設のギャラリー兼ショップになっています。

まず、彼らがA. Petersenを立ち上げた時に行なったことは、デンマークのデザイン黄金期でもあったミッドセンチュリー時代のヴィンテージの家具の「分解」でした。「分解」を行なうことで、どのようにモノが組み立てられているのか、という部分をシンプルに理解したいという好奇心からスタートしたそうです。
こういったことを繰り返すうちに「いい素材を使わなければ、いいデザインは生まれない」という自分たちオリジナルのデザイン哲学を自身の好奇心から導き出しました。

そして彼らは様々な「分解」の末に、素材への探求へと繋がっていきます。近年あらゆる場面やジャンルで聞かれる「サスティナブル」というキーワード。彼らも素材やモノをどのように調達するのかという観点において、このキーワードをよく考えているそうです。
そしてそのヒントを求め、モノが今よりも十分で無かった過去の時代(素材のバリエーションがなかったため、様々な工夫がなされていて近年見直されている)の歴史を遡ることを習慣にしています。例えば、その中で生まれたのが、今回一番の注目の家具であった「Modul」というソファのクッション材に使われた海藻などです。コペンハーゲン近郊の海で採れた海藻を天日で乾燥させてから、再び手作業で成形し直すという手法は、デンマークの古い家の屋根やマットレスでよく使われていた伝統的な製法だそうで、これを彼らは現代にアップデートし直して素材として使っています。

この歴史の知恵にヒントを見出すのは、モノづくりの観点だけではありません。彼らの建物の2階はギャラリースペースとなっているのですが、以前彼らが企画していたエジプトの椅子のエキシビジョンは、写真などが残っていない古代エジプトの椅子について書かれた過去の文献を読みその当時使われていた椅子を忠実にミニチュア版から実寸サイズまでのバリエーションで再現し展示したことで、国内外から評価を受けたりしています。

このような彼らの表現の核となるプロセスを整理すると、事実を「分解」していき、それを過去の「知恵」と結びつけて、新たなデザインとして形にしていくことが見えてきます。その彼らの思考の原動力となっているのが、「好奇心」だということがトークイベントの中で生み出されてきたのですが、モノを作る時にだけではなくそれは人間関係でも同じことだと話をしていたのがとても印象的でした。

イベントの最後には、自分たちの日常をより良くするために今できることってなんだと思うか、という質問を投げかけてみたところ、彼らは「何かがあった時に、常に問いを出してみること」だと言います。
常に問いかけ、問いかけられる状況は、人やモノやコトを「分解」していく、つまり互いを知り合うきっかけやプロセスになり、新たな「好奇心」を生みます。
そうやって自分の頭と心で見出したことは「知恵」になっていくのだろうと思います。
冒頭で話題に挙げた情報も、少しの問いかけを頭の隅に置いておくことで、与えられる情報から得る知恵になっていくのかもしれません。

Photo by ACTUS, A. Petersen, a quiet day
イベントの詳細情報はこちらから


A. Petersenのインタビューを掲載しているマガジン a quiet day ISSUE 2018 Octoberはこちらです。

 


投稿順 新着順


コメントを残す

コメントは承認され次第、表示されます。