Nordic Entrepreneurshipの予感

 世界的に有名なジャズピアニスト、ビル・エバンス。彼は1960年代に『Portrait in Jazz』『Explorations』『Waltz for Debby』『Sunday at the Village Vanguard』といった今もなお、語り継がれる名盤レコードを世に残した。彼は自身のピアノを中心に、ベースとドラムズを加え、セッションをする「ピアノトリオ」というスタイルで一時代を築いてきた。しかし、このトリオのベースを担当していたスコット・ラファロが急死してしまったことで、後退を余儀なくされてしまったそうだ。短い活動期間になったこのトリオで奏でたサウンドは、単に楽器の役割で演奏していたわけではなく、お互いに影響を与え合いながら、一つの「作品」を奏でていたからこそ、唯一のサウンドになったのだろう。こういった相互作用のことをジャズ用語で「interplay」と言うそうだ。

 今号のテーマは、NORDIC ENTREPRENEURSHIP。存在しないこの言葉を直訳すると「北欧で活躍する起業家のマインド」といったところ。なんだか取って付けた感じも否めない。けれど現地でインタビューをしている時に、この言葉やジャズの「interplay」の話を伝えると、彼ら、彼女らは妙に納得してくれ、とても興味、関心を持ってもらえた。そしてそういった話題で話を聞いてみると、まさしくビル・エバンスのピアノトリオの「interplay」の如く、少人数のチームでお互いの役割を持ちつつも、その役割や使命感に囚われず、時にはアドリブを入れ楽しみながら、ビジネスというある種のサウンドを奏でているのが印象に残っている。

 今回は15人ほどのクリエイターたちに話を聞き、「FOOD」「STYLE」「IDEA」といった章立てで編集をしている。放課後一緒にケーキを食べることから全てが始まった彼女も。全く別のキャリアを作り始めた彼も。まだアーティストの卵の学生のあなたも。アートとレコードを生業にしているヒップスターも。日本の文化やクラフトと何かを繋げている彼女らも。みんなそれぞれ自分たちの描く未来に向かって一歩ずつ歩んでいる。その姿勢こそがNORDIC ENTREPRENEURSHIPなのかもしれない。

 ビル・エバンスでも流しながら、これを読んで、あなたの考えるNORDIC ENTREPRENEURSHIPを見つけて欲しい。

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