Talking about others / T-Michael

ノルウェーのベルゲンから生まれ、首都のオスロ、そこから世界に展開しているテーラーブランドT-MichaelとレインウェアのNorwegian Rain。2016年にはロンドンにも路面店を作りその勢いは、止まる所を知らない。ビスポークテーラーとしての技術と経験をベースにデザイナーとしても活躍するT-Michaelにそのモノづくりや空間づくりに対する考えを、ベルゲンで聞いてみた。

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 ノルウェーのナショナルデーでもある5月17日。一年の中でノルウェーが一番盛り上がる記念日が明後日に迫り、ノルウェーの第二都市のベルゲンも、なんだか街中が少し浮ついた異様な雰囲気に包まれていた。ベルゲンという街は、年の三分の二が雨といわれているのが、まるでそれが嘘のような晴天の陽射しの中、T-Michaelのショップを訪ねた。すると久々の晴天にテンションをあげたT-Michael本人が笑顔で出迎えてくれ、開口一番「チョコのアイスバー食べる?」とショップをほったらかしにし、気を利かせてアイスバーをわざわざ買いに行ってくれた。これは、とても彼らしい一幕だ。

 というのも彼はショップという一つの場を、商品の売り買いという場所だけではなく、ファッション以外の他のことについて話す場所と再定義して空間をつくっているのだ。この場所にあるモノやコトは、全てその会話のきっかけとなる。

 具体的には自身がデザインするT-MichaelやNorwegian Rainのジャケットやレインコートの他に、モノづくりが細部まで徹底して行なわれていたミッドセンチュリー期(1950年代から60年代)のヨーロッパを中心とした家具や照明、古レコードやマガジンなどを所狭しと並べている。それらのものにはブランドヒストリーだけではなく、その細部へのこだわりやディテールなどの会話のきっかけとなる糸口やストーリーを多く持つ。そういう商品を扱う専門店をショップインショップ形式で迎え入れ、一緒に場所をシェアしながら空間をつくり上げているとのことだ。

 「Talking with people is good way!」と語るT-Michaelはさらに会話を弾ませるために、ワインやウィスキーを提供するバーカウンターまでもショップ内に備えつけている。ショップ以上のクリエティブな状況をつくるため様々な仕掛けをしているT-Michaelが販売しているは、実はその状況そのものなのではないだろうか。

 この状況を楽しんだ人は、アイデアが呼び起こされる場所に引き寄せられるだろう。T-Michaelは自信に満ちた表情でチョコのアイスバーを頬張った。 

 

- あなたにとって仕事の難しさってどんなところにあるの?

そうだね。難しいことは実際に、より良い状況をつくることかな。

なぜなら僕がユニークで違った何かを作り上げたいからなんだよ。ただショップを持ちたいだけでもないし、ただスーツを作りたいわけでもない。スーツやシャツ、レインコートと芸術的な雰囲気のお気に入りのスペースを組み合わせて、ここを訪れた人たちに最高の体験を贈りたいんだ。

人は興味深いものを考えてモノを買うから難しいんだ。さらにエキサイティングな状況をつくることも難しいことだけどね。でもそれは最高なんだ。 

- どうやってその状況を打開しているの?

困難なことは、ひどく難しいことのように感じるよね。どうすればいいのか分からないし、新しい形で異なるモノを一緒にまとめるならなおさら。だからルールなんて設定しない。要は何が上手くいって、何が上手くいかないのかを見極めなくちゃならないんだ。そう、だから大抵は「時間」がその困難を解決してくれるんだ。それは日本語でいうところの、えーっと、、、七転び八起き!何度も何度もトライしていくことだね。すると時々正しく、時には間違っていることが分かってくるはずだよ。そして最終的には、完璧な環境や状況が整っているはずだ。完璧に近づくということは、そういうオーガニックなものなんだ。

ただ洋服やレインコートを売るだけではない、ショップ以上のクリエイティブなスペースを求めるT-Michaelは、ショップの正面に「In this house we only talk about others」という電飾を掲げている。2016年の9月に新しい場所にショップを移転させ、ショップも広くなりこのコンセプトはさらに加速したという。「ショップが楽しい場所なら、その人たちは戻ってくるだろ。しかも友達を連れてね。」ショップ内には、主に1950年代のミッドセンチュリー期のヴィンテージプロダクトがディスプレイされている。さらに地下のワークショップスペースにはワインバーも併設されている。「Talking about people is good way!」そう話すT-Michaelにとって、それは音楽、家具、マガジン、カメラ何でも構わない。そこにストーリーがあるならば。

- モノを作る時にどんなことからインスピレーションを受ける?

何かモノを作る時のインスピレーションの源は、全く違うものから受けるんだ。

例えばスーツを作るとしようか。その時にスーツからインスパイアされたら同んなじようなスーツしか出来ないだろ。それが古い車だった場合、そこにスタイルやストーリーが生まれてくるんだ。人に伝えたくなるようなね。

それと本当にモノづくりとしていい時代のものをよく観察することだね。僕がデザインするフォーマルレザーシューズは、1920年代のサッカーシューズからのアイデアで、この頃はまだ本革を使ったこだわりのシューズだったんだ。そういった古いモノづくりのこだわりからも、たくさんヒントを得ているよ。

- 古いモノと新しいモノの関係性についてどう思う?

とても相性がいいと思う。みんな最初は古いモノを参照のポイントとするべきなんじゃないかな。でも古いモノをそのまま取り入れるんじゃなくて、少し変えてみることが大事。変えるところは、ほんの少しのディテールだけでいい。そうすると人は違いに気づいて、なんで違うんだろうと考えるだろ。そこが、興味や話のきっかけとなるんだ。

 

T-Michaelは、古いモノと新しいモノの関係性について説明する時に、一着のジャケットを例に説明してくれた。このジャケットはポケットの切り込みが、よくある横のタイプではなく、縦に付いていて、それこそがユニークポイントとなっている。これを見た人が不思議に思うということが重要なのだ。そしてT-Michaelは、こう続けた。

If you change too much, people leave, and if you change a little bit, they keep excited.

T-Michaelのインタビューを掲載したマガジンa quiet day Season6はこちらから。

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